ドロップシッピングという遊び
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いきなりタイトルと違うカタカナで始まって恐縮ですが、「オンデマンド」という言葉をよく聞くようになったのは、90年代後半だったような気がします。最初は動画配信だったのかな。好きなときに好きなソフトを視聴できるようなサービスで、ケーブルテレビ局が始めたんじゃないかな、と。ケーブルテレビ自体は80年代からあると思うんで、ググってみたらWOWOWがヒット。
WOWOWはケーブルテレビ局ではないですが、「WOWOWをケーブルテレビ局経由で視聴」という記事でした。Wikiで調べてみたらWOWOWは84年設立とありました。オンデマンドな動画配信は、Netflixやアマプラなど今でこそ当たり前のサービスですが、レンタルビデオ店が業態転換に追い込まれるにはそれなりの時間がかかっています。スマホの普及が大きかったんでしょうね。
当然、スマホの普及の前提として通信回線の高速化があって、スマホの高速化の前にはそもそもインターネット(主に有線接続)の普及という大前提があり、オンデマンド動画配信が始まった90年代後半というのは、まさにネット普及の歴史と重なるんですね。
なので、同時期によく聞くようになった「インタラクティブ」という言葉と混同している人もいるかもしれません。英語を母語としない日本人の多くは、オンデマンドという単語を「オン+デマンド」の組み合わせだと気付きもしませんし、デマンドの意味もわからない訳です。エッチな言葉ではないですよ。
僕は、「なんでもかんでも英語のまま使うなよ」と言いたい派なので訳しておきますと、オンデマンドは「要求に応じて」。インタラクティブは「双方向」です。ほら、混同する理由が見えてきません?
一度も使ったことがないんですが、テレビのリモコンに付いてますね。青、赤、緑、黄色のボタン。アンケートとか投票とか、視聴者が参加できるやつ。つまり、局と茶の間の双方向です。インターネットに接続することが前提なんで、オンデマンドと混同しやすいんですね。
ところが、この4色ボタンはネット環境がなくても使えるんですよね。データ連動は可能です。でも「受けるのみ」で、双方向じゃない。「だけどデジタル」なんですよ。もう、ワケわかんないですよね。これ、2010年頃にリアルで体験した実家のジジババのリアクションです。
アナログ放送が終わって、「地デジ」へ完全移行するためのテレビ買い替え騒ぎの中で、年配者の頭の中はさぞ混乱したと思います。4色ボタンを双方向で使うのは、おそらくそのテレビの上位機種だけの機能ですし、上位機種を買ってもネット回線がなければ無意味です。それでも買っちゃった人はたくさんいると思いますよ。
そしてさらに混乱に拍車をかけたのは、買収される前のシャープ製液晶テレビ「AQUOS」です。当時のシャープは、液晶テレビで絶好調でしたよね。「世界の亀山モデル」なんてね。巨ベラのメッカ、千葉県の亀山湖じゃないですよ。AQUOSのCMといえばモッくんですよ。若い人はモッくん知らないか。液晶テレビってのも違和感かもですね。だって、現在は液晶しかないんですから。
そしてそのモッくんがですね、RGB(レッドグリーンブルー)ならぬRGBY(レッドグリーンブルーイエロー)のAQUOSクアトロン(クアトロは4という意味)を宣伝したんです。ここぞとばかりに。光の3原色だけじゃダメだと。黄色も要るんだと。それはもう、画期的な発明という体で。タイミング悪すぎですよね。リモコンの4色と丸かぶりですよ。
ブラウン管テレビから買い替えた液晶テレビがシャープ製じゃなくても、リモコンを見てクアトロンだと思った人たくさんいたと思いますよ。井戸端会議では、「やっぱこれからはクアトロンだよね。4色ボタンなら双方向通信できるし!」みたいなことを言ったことでしょう。「いやいや、これからはインタラクティブだよ。見たいときに見たい映画が見られるんだぜ!」なんてね。しかも二人共、ネット回線引いてなかったりすんすよ(笑)。
そんなレベルでも、「今まで茶色(ブラウン管)が大事だったんじゃないの? リビングをお茶の間って言うし」なんていう情弱に対しては、充分にマウント可能だったのです。
近年は、「オンデマンド印刷」なんていう言葉もよく聞くようになりました。SOD(ソフト・オン・デマンド)というAVメーカーがあることで、「オンデマンド=動画」と脳内勝手翻訳していた人は、ここで誤訳に気付いたと思います。
従来、印刷って大事(おおごと)でした。原本を複製する基本的な原理は「版画」ですから、版(モノでいえば「型」。3Dプリンタが注目されているのも本稿と同じ理由ですね)を作るとなれば、わずかな部数ではコストが掛かりすぎます。そこに登場したのがプリンタですが、一般家庭に普及しているインクジェット方式では、特に文字で輪郭の甘さが気になりますね。レーザープリンタも安くなってはいますが、どこの家にもあるというレベルではありません。
そんなとき、高品質で必要な部数だけ刷ってくれるサービスが外部にあれば便利です。実店舗を構えるアクセアとかキンコーズみたいなのもありますが、プリントパックやラクスルを始めとするネット印刷が大盛況ですね。印刷品質は二の次で妥協できたとしても、家庭用プリンタでは印刷できるサイズに限界があって困るからです。
家庭用ではほとんどがA4までしか出力できません。大判印刷と言って良いのか謎ですが、A3からもう困りますし、ポスターなんか、もちろん家庭で印刷はあり得ません。なので、僕もけっこうお世話になっていますが、コレ、紙だけじゃなくてTシャツやマグカップでも可能になっているのが現在なんですね。
従来からインクジェット用のアイロンプリント紙なんかもありますが、「輪郭が甘い、色が薄い」など、期待した仕上がりには程遠いのが現状なので、オリジナルグッズにプロのクオリティを求める場合は外注一択になります。でも、小ロットでは受け付けてくれない時代が長く続きました。
そこに、「必要なとき=売れたとき」に印刷するサービスが登場。つまり、販売者は在庫を持たなくて良くなった訳です。これが、今流行りの「ドロップシッピング」です。お爺ちゃんお婆ちゃん、いいですか。「オンデマンド印刷=ドロップシッピング」ではありません。オンデマンド印刷が「可能にした」ドロップシッピングです。ショッピングじゃなくてシッピングです。
ドロップシッピングは「直送」という意味です。シッピングが配送というのはわかるんですが、なぜドロップが「直」なのか、高卒の僕にはいまいちピンときません。プロレス技「バックドロップ」のドロップは「落とす」ですもんね。
(いよいよ本題に入ったのにまだ脱線しようとしているワタシ)
ドロップシッピングには、日本では「BASE」が火をつけたように思いますが、今はいろんなところでやっていますね。要は、デザインだけすれば、あとは売れるのを待つだけ、という仕組みです。販売代行、決済、印刷、梱包、発送まで丸投げできます。在庫を持たなくて良いので、デザインする情熱さえ衰えなければ、いくらでも店先(ネットショップ)に並べられます。
いまや誰でも、夢のショップオーナーになれるわけです。大量生産ではないので、必然的に売価は上がりますけどね(原価厨にはご用心)。これを「お店屋さんごっこ」と揶揄する人もいますが、「多様性の時代=個性で勝負の時代(って、大昔からそうだろっての)」ですし、情報拡散ツールは個人でも使える時代ですから、間違ってバズってしまうかもしれません。宝くじを買うより現実的な夢だと感じますね。
ただ、猫も杓子もドロップシッピングに手を出す時代では、よほどの個性がなければ埋もれてしまいます。個人をブランディング(セルフプロデュース)するといったって、なにもないところからではスターは作れないわけです。でも、誰でも何かしらの強みはあるでしょう。
どう考えてもニッチな市場だとしても、ごく少数には必ず刺さると信じられるものを具現化する。大好きなことを徹底的に掘り下げるとか、他人とは違う着眼点で切り込むとか、きちんと内容が伴っていれば、少なくても理解者は必ず出てくると思います。いちばんダメだなと思うのは、カタチだけのやつです。
ロゴマーク作りました、ステッカー作りました、ワッペン作りました、Tシャツ作りました…で、そのロゴに込めた意味と裏付けとなるストーリーは? って話です。パロディー好きな僕が言うと説得力に乏しいかもですが、そう感じます。ユーチューバーも同じですよね。チャンネル作りました、ステッカー作りました、登録してください!って、大事なのはコンテンツですよね。
すでに有名なユーチューバーとのコラボもいいけど、もっと自分を磨かなきゃって感じる人は結構いますよ。何を発信したいんだろう? 誰に見てほしいんだろう? というね。「あなた誰?」というのは、有名人じゃないくせに! という意味ではありません。きちんと「あなたを知りたい」のです。遊びなら、自己満足でも良いんですが、どうせやるなら本気でやりたい、と僕は思います。
で、ここから宣伝も入りますが、こだわりのデザインで商品を作ったとしてですよ、店構えにはこだわらないのって、勿体ないと思うんですよね。大手のモールなら、知らない人からも見てもらえる機会は増えますが、それではブランディングが完成しない。僕はデパートのテナント店より路面店派です。
よし! じゃあ自分でウェブサイトを用意するかってなったとしても、たとえばWordPressなら、みんなが同じテーマやプラグインを使うと、見た目が似てくるんですよね。「あ、このサイト、◯◯テーマ使ってんナ(笑)」みたいな。目が肥えるといえば聞こえは良いですが、人間は満足が長続きしない生き物なのです。
とはいえ、フルスクラッチでウェブサイトを作れるスキルなんて、そうそう身につけている人はいませんし、僕も無理です(笑)。商品デザインにかける時間を削ることになるようでは、本末転倒ですしね。そこで、「テーマ+プラグイン+カスタマイズ」という手が妥協点というか最適解になると思います。
ある程度まではありモノに任せ、細かいところ、オリジナルでは調整不可の領域だけを、htmlとCSSを書いて調整する。なんなら、テーマファイルや翻訳ファイル(WordPressは英語版がベース)にも手を入れる。けっこう見た目を変えられますので、既製品らしさは消せます。ぜひご相談ください。