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「練る」についての歴史2

クマちゃんこと熊谷充さんの動画を観て、唸りましたね。ビギナーにもわかりやすい、チョー親切な動画だと思いました。熊谷さんのトークは相変わらず素晴らしくて、やはり日本一だと感じます。エサの調整だけで15分を超える動画なんで、すぐに飽きてスキップしてしまう人もいるでしょうが、これは最後まで観るべき動画です。特に中級者以上の方。

えっ? ビギナー向けじゃないの? と驚かれると思います。その通りです。クマちゃんも明確にビギナー向けに語っています。でも、最後の最後に中級者向けのアドバイスがあるんです。そこで何を感じるかで、自称中級者(であるビギナー)なのか本当に中級者以上なのかがわかります(たぶん)。そういう意味で(メーカーは意図していないだろうけど)秀逸な動画であり、エサを宣伝する上での限界点を露呈しているというか、メーカーとして今できる精一杯の解説なんだろうなと感じました。

褒めるところから始めて結局Disるの? と思われるかもしれませんが、そんなつもりはありません。動画の中でクマちゃんの紹介する方法論には一点の矛盾もなく、実に素晴らしい動画だと思います。ただそれは、このエサ(隼)に関してはそうであって、「他のダンゴエサでも常に同じとは限らない」という視点を欠落させるほどの説得力(トークの上手さと解説の両方)が、ちょっと危険だと思うのです。もちろん、ビギナーの取っ掛かりとしては素晴らしいんですよ。

そもそも、江成は何様だっていう話ですよね。「へら専科のライターだかなんだか知らないが、調子に乗ってんじゃねぇぞ!」って言われてしまうブログ記事なのかもしれません。でも、自分のスタンスは変えられません。「その製品を宣伝すべきメーカーには言えないこと(気付いてないかも)」、「クマちゃんは当然わかってんだけど、あえて言ってないこと」があるのなら、そしてそれに気付いたのなら(勘違いかもだけど)、書くべきというのが僕です。

だいたい、トンデモな宣伝文句ならツッコミを入れる気も起きません(昨年のパート1ではツッコミましたが)。今回はあまりにも完璧な動画なので、ツッコミたくなった次第です。その辺のリスペクトというか、ここまでわかりやすい動画を作るメーカーの姿勢というか誠意には、敬意を表したいと思っています。

どうでもいいことかもしれませんが、僕とクマちゃんは一時期、同じクラブに在籍していました。歳上なので、当時「クマちゃん」なんて呼んだことはありませんし、今も釣り場でお会いすれば「熊谷さん」とお呼びしますが(笑)、全国的な愛称なのでお許しいただきたいと思います。

自分で振り返っても敵う相手ではなかったな、というのは重々承知ですし、クマちゃんも僕のことなんかアウトオブ眼中だった筈ですが、釣果だけで見れば、当時は年間レースを競う仲でした。「仲」というと親しそうですが、そんなことなかったです(笑)。でもまぁ、ノー接点ではなかったので、少しは語る権利があるんじゃないか、という思いです。Facebookでシェアすれば、僕はご本人と繋がっているので、目に触れる可能性は当然にありますから、Disる筈もないんですよ(笑)。

さて本題。ネタバレになっちゃうんで、この先は動画を観てから読んでいただきたいんですが、泥臭く一歩一歩エサを調整していく様は、本当に好感が持てます。クマちゃんは言う訳です。「いじりすぎるから失敗しちゃうんだ」と。初級中級問わず、多くの方にとって耳の痛いセリフですよね。

問題はこの先です。A「どうせ手水を打つのなら、最初から水量多めで作れば良いじゃないかと誰しも考えるが、それだとエサがペチャッとしちゃうんだ」。ふむふむ。「水が多いと粒子どうしがくっついてしまうので、隙間がなくなる(つまり、開かない、重くなる)」。ビギナーは、「なるほど〜! 深いぜ!」とむせび泣くでしょうが、中級者以上は「へっ!知ってるよ!」・・・・・で終わらせて本当に良いの?

途中、B「元々しっかり持つエサなので、従来の擦り付けるような練り方をしてしまうと、せっかくの軽いエサが重たくなる」という解説もあります。真面目に視聴していた人は、この解説も組み合わさって、Aで膝を叩いたことでしょう(Bの前に、「どのエサでも同じ」というセリフがあります。これは「エサ付けの形でエサ持ちが変わるのは」に続くセリフですが、Aまで引きずるとちょっと厄介です)。

実はABは、厳密には粒子の結合状態が違います。重くなるのは一緒だとしても、粒子の潰れ方(絡み方)が違うわけです。これがどういう結末の差を迎えるかというと、開き方です。拡散範囲の大きさ、芯の大きさが変わってきます。

昨年のパート1で書きましたが、C「ボソ感を残し、麩を面ではなく点で接着するため」というのが、基本的な増粘剤の使い方における僕の持論です。なのでD「増粘剤に頼った芯は、軟らかくすると増粘剤が溶け出し、開きすぎてしまう」とも言っています。つまり、増粘剤が入っていても、圧着は必要なんです。にもかかわらず、もしABに大差がないのだとすれば、そのエサはどんだけ増粘剤が入ってんだ? っていう話になるわけです。点が麩で、面が増粘剤なの? と(買って使ったんで知ってますけど)。

あれからちょうど一年。現役トーナメンターでもないただのオッサンである自分が、ダンゴエサのテキストを書く日が来るとは思わなかった。

動画ではボソ感を残すエサ使いを推奨しているので、僕の持論Cとも何らバッティングしませんが、Dの状態にならないエサであるとしたら、Aは「エサ使いの問題ではなく素材の問題だ」とした方が、より正直な売り方だったでしょうね。できなかったと思いますが。

以前から、軟エサでも増粘剤を多用する人はそれなりにいました。E「練る必要はもうない」とまで言う人達です。増粘剤は後からいくらでも足せるわけですから、このエサ以上のヤワネバブレンドも存在したでしょうが、そうそう水で戻しきれないようなネバは、学習時にはダンゴの理解から遠ざかる気がしてならないのです。作れるタッチの幅が狭いからです。

ボソを抑えた方が良いと感じたときに、圧着する方向が封じられたエサというのは如何なものか? と僕は感じてしまいますが、魚影が薄い釣り場が多い昨今、寄せを意識して麩を立てた方が(拡散を広げた方が)良い場合が多いです。麩を立てても芯残りさせようと思えば、増粘剤の登場になるわけで、僕の感覚はやはり懐古趣味なのかもしれませんね。

でも、エサ合わせの技術習得に必要なのは、傾向を知ることだけじゃないですよね。増粘剤入りのエサが主流の現在、誰もがなじませやすくはなりましたが、どの程度タナまで持っているか(どの程度途中で抜けているか)をイメージできる人は少なくなりました。ヘラブナにしてみれば、わざわざハリの付いた芯を食べるような危険を冒す必要がない、という想像ができなくなっているんです。

これは、ダンゴとセット釣りを結びつける際にも重要なことで、このイメージがないと、ダンゴとセットは別の釣りのままになります。動画ではボソ感の残ったこのエサを、「最初から食い頃」で「一発取り」を狙うと言っていますから、拡散は弱いんでしょう。現代の釣りに合った究極のエサなんだと思います。

その解説として、クマちゃんは「エサを削らせてから残った芯で食わせるのは時間の無駄」と言っていますが、「削っただけでお腹いっぱいのケース(わざわざハリの付いた芯を食べる必要がない状態)を躱すため」、の方がセット釣りにも繋がる解説かなと思いました。当然クマちゃんはそんなことはわかっているわけですが、ビギナー向けには余計なことは言わないんですね。

だけどあまりにもエサの出来がいいのも、考えることを放棄させてしまうので、罪だということです。釣りは釣れなければ楽しくありません。なので、ビギナーにも簡単に釣れるエサは大事です。そこは、理解できます。問題なのは、そこからなかなか中級者への扉が開かないことなのです。

削っただけでお腹いっぱいのケースでは、無駄に拡散させないという戦略になります。その結果、ヘラブナの芯への「距離」が縮まる訳ですね。逆に、寄りが保てず、ヘラを散らすケースもあるでしょう。そうなれば拡散を減らせませんから、芯の位置をオフセット(段差をつけてクワセを使用)するしかないんです。

「ゲキシブで粒子を散らすとアタらないけど、締めたエサでも寄りは保てる(芯に接近させられる)」という場合には、ダンゴでもノーバラケに近いエサが良くなります。固形チック、と言われるタッチですね。硬いと吐き出しが早いですから、ある程度軟らかくする必要があります。つまり、軟らかい固形イメージです。このときが、練ったエサの使いどきです。チリチリとしたバラケに留めたいのですから、麩が立っている必要はありません。全部が芯で良いんです。もちろん小エサです。

これを増粘剤だけに頼ると、限界を超えればバラけ過ぎちゃうし、コシがないのでスッポ抜けるんですね。いえ、Eのように上手に使いこなす人もいるので、一概には言えないんですが、増粘剤多用のエサが主流になると、「ダンゴは練っちゃダメ」という切り取り方をされてしまう心配が拭えません。練ることの本質は、粒子の圧着だと思うからです。ネバリという役割を増粘剤に譲ってしまったとしても。

練ってしまうと重くなるのは事実だと思うものの、練らないと沈まないエサも過去には存在しました。この場合、重さをつけるのも大事なんですね。常に悪ではないのです。

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